今日は肩峰下滑動機構についてまとめていきます。
この図は棘上筋の長軸に沿った前額断面を示しています。
棘上筋腱は外転運動とともに大結節を近位へと引き込むことで支点を形成し、三角筋が上腕骨を回転させます。この時の棘上筋腱は、肩峰下の狭いスペース内を内側・外側方向へと効率よく滑走できることが必要ですが、棘上筋腱と接する組織との間には、摩擦刺激(friction stimulus)が発生します。この摩擦刺激の繰り返しは、腱板の編成や断裂の原因となりますから、この部分の活動状態を良好に保つ必要があります。
その重要な役割を担うのが、肩峰下滑液包となります。
- 肩峰下滑液包とは?
人体最大の滑液包と言われています。
肩関節の運動に伴って生じる痛みの多くは、肩峰下滑液包周辺で生じていることが多く、疼痛を感知する受容器である自由神経終末の分布も非常に密であることが分かっています。
肩関節障害の評価では、この肩峰下滑動機構でのトラブルをどう捉えていくかがポイントになります。
そのため、肩峰下滑動機構のトラブルによって生じる疼痛や機能障害は、肩峰下滑動機構を構成する組織に破綻が生じていることで発生します。
下の図は肩峰下滑液包がおおよそどのあたりに位置するかを示したものです。
肩峰下滑液包の外側は、腱板の停止である大・小結節をはるかに超えて三角筋の深部へと広がっている分かります。
また前後の幅は、肩峰の前半分から烏口突起までの範囲内にあることが分かります。
下の図は、肩峰下滑液包も取り除き、その深部に位置する組織を描いたものです。
肩峰の前半分から烏口突起の幅を想定してみてみると、肩峰下滑液包の深部には、前方より肩甲下筋腱、烏口上腕靭帯複合体、棘上筋腱、棘下筋県が位置することが分かります。
つまり肩峰下滑液包は、棘上筋腱をはじめとするこれらの組織の上方に、広く「面」として存在していることが分かります。
肩峰下滑液包の機能は、肩峰下における棘上筋の滑り効率を高めるとともに骨頭が情報偏移した際のクッションとして作用しています。
肩峰下滑液包は、肩関節の外転運動の際に、形態を変えていきます。
腱板の内外側方向への活動に対して、肩峰下滑液包はキャタピラが転がる様に移動すると理解されてきましたが、近年Birnbaumらにより報告された論文では、肩峰下滑液包一部の壁が滑っていくように移動することで円滑な滑りが達成されることが分かってきました。
肩峰下滑液包炎後の癒着症例では癒着が滑液包内で起きたとしても、滑液包外で生じたとしても関節包の滑りは疼痛の引き金となる。
この時生じる挟み込み、引き連れ、ねじれなどの機械的刺激が肩峰下滑液包の機械的刺激が肩峰下滑液包並びに滑液周囲の組織に作用することが分かりました。