前回は、脂肪組織について足関節の背屈を見ました。
今回は長母趾屈筋(FHL)がどのように足関節の背屈に影響を与えるのかをまとめていきます。
足関節の背屈制限がある場合、一番最初に思い浮かべるのは、ヒラメ筋・腓腹筋の制限ではないでしょうか?
私もそのように思っていました。
しかし、足関節の底背屈の動きをエコーで確認すると、ヒラメ筋と腓腹筋よりも長母趾屈筋がよく動くことが分かります。
筋の場所を確認しましょう。
長母趾屈筋腱は距骨の内側結節と外側結節との間に長母趾屈筋腱溝を通過します。
この溝は、距骨の真後ろにあります。
つまり、背屈に伴う距骨の後方移動を妨げる組織として、長母趾屈筋が上がります。
背屈の可動域制限を考える上では、以下のことが重要だと考えられます。
- 長母趾屈筋自体の柔軟性が担保されていること
- 脛骨と長母趾屈筋との癒着が存在しない
これがクリアーされることで、足関節の背屈が機能すると思われます。
では、
評価をするときには
・筋自体の伸縮性が低下して伸びないのか?
・骨を含めた周辺組織との癒着により滑らないのか?
どちらが問題なのか明らかにする必要があります。
・伸縮性が足りないのであれば、答えは簡単です。⇒ストレッチを行います。
・癒着であれば⇒剥離操作が必要になります。
このように病態の理解をすれば、何をアプローチするのかも見えてきます。
じゃあ、どんな評価をしたいいのでしょうか?
大まかな評価をする時には、動的腱固定効果を利用します。
母趾の伸展可動域を足関節の底屈位と背屈位で比較します。
障害が高度の場合は、足関節が背屈すると母趾とⅡ趾は勝手に屈曲してくるのではなく、自動で伸ばすことができない。
底屈位だと自動・他動ともに簡単に伸ばすことができます。
ただここで不思議なことがあります。
母趾だけでなく、なぜⅡ趾も屈曲するのでしょうか?
これは、長母趾屈筋腱と長趾屈筋腱をつなぐ交叉枝の存在の影響だと思われます。
この交叉枝はほとんどの人が母趾とⅡ趾がつながっています。
そのため、背屈に伴う長母趾屈筋の緊張の増加は、長母趾屈筋腱を近位へ引き込むだけでなく、Ⅱ趾も併せて屈曲してしまいます。
細かく評価をする際には、癒着の有無を確認しましょう。
癒着は、組織間の滑走が起きないという病態です。
足関節は、背屈位にしないで、自動で母趾が屈曲できるか確認をします。
※背屈位にすると長母趾屈筋が短縮していても影響を受けるため。
高度の癒着している場合は、自動運動での母趾のIP関節の屈曲ができません。
軽度なら屈曲不全が起こります。
母趾が自動で屈曲できる場合は、それは短縮ということになります。
このように評価をしていくと足関節の背屈制限にどんなことが考えられるのかアイディアを出すことが推論力をあげることになるかと思います。